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1.3 焼却処理の方法と特徴

前記のような考え方のもとにムース化した流出油を現場焼却を行うとして、具体的にはこれをどのように実施するのがよいのだろう。そこにはいろいろな問題があるが、残念なことにここでは実際に近い規模での海上実験が出来ていないため、その構想だけを、処理薬剤の散布法、焼却条件、着火法、残渣の回収などを中心に記し、併せて本焼却法の特徴を改めて総合的に検討して、以下の章の手引きとする。
(1)処理薬剤の散布法
焼却処理に必要とする決められた種類、濃度、量の界面活性剤をムース化油に散布する方法としては、人手による散布から動力ポンプによるもの、さらにはヘリコプターを用いた空中散布まで各種のものが考えられる。しかし、本焼却法では大面積を一度に燃やすことは念頭になく、それほど大きくない区切られた面積の焼却を順次繰り返すことを考えているので、運搬に便利な小型の動力ポンプによる散布が適当ではないかと思われる。ただし、処理薬剤を棒状の液流により散布する方式は射程の出る利点はあるが、均一な分布が得にくく、かつ散布効率が悪いので好ましくない。ここは噴霧状にして散布すべきであろう。
なお、散布する界面活性剤溶液は化学的に安定、また発火性、腐食性などもないから、どこにでも安全に長期間の保存ができる。
(2)処理薬剤の散布範囲
それでは処理薬剤の散布範囲はどの位にするのが適切なのだろう。この範囲は火を着けたときの燃える範囲を意味するから重要であるが、これを考えるに当たっては次の二つの面を考慮する必要がある。一つは燃焼に伴う周辺への影響であり、他は焼却処理を実施する作業者の安全である。
前者では主として燃焼時に生成する火炎に基づく放射熱、煤、明るさなどが問題となる。この中、放射熱をどのように推定し、どう評価するかは第2章で論ずる狐ここでは風があると火炎が傾き受熱量が変わること、また風向によっては放射熱以外の熱流も加わることなどを配慮しなければならない。当然、受熱対象は人間だけでなく施設や樹木にも及び、また、火炎から発生する煤やそれからの発光は、焼却現場が民家に近い場合には問題になる。

 

 

 

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